プロジェクトの目的
世界自然遺産知床は民有林の森で守られています。

北海道東部、オホーツク海に突き出た知床半島は全体が国立公園であり、オホーツクの海と知床の陸とが一体となった生態系が高く評価され、2005年、世界自然遺産に登録されました。
知床で世界自然遺産地域に指定されている森林は半島の中心に広がる国有林地域です。この世界自然遺産地域の森林を取り囲むように、地続きで民有林が続いています。知床の世界遺産の森林は、民有林という外套によって護られているのです。
知床は世界自然遺産に指定されています。この自然を護り、次代に伝えるのはここに暮らす住民の責務となっ
ています。知床地域の民有林が世界自然遺産知床地域の範囲外だったとしても、民有林の多くは、世界自然遺産知床地域の森林と地続きにつながっており、その
荒廃は、世界自然遺産知床地域へも悪影響を与えかねません。
知床での民有林経営は難しくなっています
さて、秘境として知られた知床地域の開拓の歴史は北海道の中でも遅く、本格的な開拓が始まったのは 明治の後半からです。それだけに知床地域では、森林所有者の多くが地域に在住し、祖父母世代が拓いた山を今も多くの住民が護り続けているのです。しかしな
がら、知床地域においても、木材価格の低迷、高齢化などによって、森林経営への意欲を失うオーナーが少なくありません。

森林の持つ多面的機能のうち、オーナーが利益として享受できるのは、木を伐採して材として販売する物質生 産機能に限られています。しかも、今日木を植えたオーナーが、その恩恵が受けられるのは伐採期に達する50年後です。その間に行う間伐などの森林管理は、
たとえ補助金があったとしてもオーナーの持ち出しとなっています。
ともすれば、自分の代には、持ち出しだけが膨らみ、終世利益を受け取れないことも起こりえるのです。
事実、遠く離れた場所に住む子ども世代の中には、親からの森林の引き継ぎを拒否しているという事例も聞こえてきます。
知床の森を守るため、知床での林業を守るため、私たちは活動します

こうしたことから当NPO法人では、環境省のカーボンオフセットクレジットJ-VERに着目いたしました。J-VERは、適切な森林管理によって樹木が成長しCO2の吸収量が増大した分をオフセットクレジットとして認定し、経済的な価値を与える国の制度です。
知床の森林オーナーが歯を食いしばって自らの森を守るのは、将来に木を売って収入を得ることだけが目的ではありません。
知床の自然を守りたい、豊かな森を後世に残したいという思いです。適切な森林管理が経済的な価値として認められるJ-VERは、こうしたオーナーの思いに報いることのできる唯一の制度です。
私たちは、J-VERクレジットを通して、知床の森づくりを応援し、よって知床の森を守ります。